スポーツビジネスの現在地
現代におけるスポーツビジネスの基礎についてはこれまでのコンテンツで紹介してきました。
今回は、このようなスポーツビジネスの基礎は昔からあったのか、自分たちで稼ごうとなったきっかけはなんだったのか、過去から振り返りながら解説します。
今回のテーマ
- スポーツビジネスって昔からあったの?
- スポーツでお金を稼ぐようになったきっかけは?
- スポーツでお金を稼ぐために今、各チームが取り組んでいることは?
学生時代からスポーツビジネスの現場経験にはじめ、イベント企画制作、営業など、スポーツエンタメ業界内外を経験し、現在はプロスポーツチームに従事している筆者がわかりやすくお伝えします。
スポーツ人気の歴史
「巨人、大鵬、卵焼き」
この言葉を聞いたことはありますか!?
これは1960年代、日本が高度経済成長期の頃に流行した言葉です。
高度経済成長期とは?
日本では第二次世界大戦の敗戦後の復興や1964年東京オリンピック・パラリンピック、1970年大阪万博の開催をきっかけとした東海道新幹線や東名高速道路といった交通網の整備など、経済が著しく高成長を遂げた期間のこと。
「巨人、大鵬、卵焼き」は「子どもを含めた大衆に人気があるものの代名詞」として使われていました。
巨人はプロ野球の読売ジャイアンツ、大鵬は幕内最高優勝32回を誇る名横綱。
3つ中2つがスポーツに関連する言葉ということもあり、1960年代からスポーツの人気は高かったと言えます。
では、当時からスポーツでお金は稼げていたのでしょうか?
誤解を恐れずに言うと、2000年代前半までは「稼ごうとしなくても問題がなかった」というのが実情でした。
稼がなくても問題がなかった時代|2つの理由
例として、プロ野球をもとに解説します。
①放映権依存
プロ野球界は1990年代から2000年代前半において、4大収益源のうち放映権を中心としたビジネスを展開していました。
1990年代から2000年代前半は、関東地方であれば基本毎日、地上波放送で読売ジャイアンツの試合を放映していたような時期です。
②親会社依存
プロ野球球団は親会社の広告塔としての機能もあり、赤字であっても親会社が広告宣伝費として赤字を補うことができていました。当コンテンツを執筆している2022年においても日本のプロ野球は広島東洋カープ以外の球団はすべて親会社が存在しています。極端に言えば、球団が赤字であっても親会社の名前が多くの人に知れ渡って親会社の儲けに繋がれば問題なしという風潮でした。4大収益源のうちのスポンサーの部分がほとんど親会社みたいなものです。
では、そのような環境からどのように自分たちで稼ぐように変わっていったのでしょうか?
自分たちで稼ぐことが必要になった時代|2つの理由
①消費者行動の多様化
2000年代前半までのテレビ黄金世代から変わり、私たち消費者の行動も多様化してきました。つまり、時間の使い方がテレビ以外にもどんどん増えてきたということです。東京ディズニーリゾートのようにほかのエンターテインメントに流れたということももちろんありますが、現代ではみなさん当たり前のように使っているスマートフォンを使った時間消費(SNS、ゲーム、オンライン○○など)も著しく増えてきました。事実、初代iPhoneが登場したのも2007年です。
②親会社依存の限界
2004年、プロ野球大阪近鉄バファローズの親会社が多額の赤字を抱えたことで球団を手放しました。2000年代前半までは球団が赤字であっても親会社に助けてもらえるという環境から、親会社の経営状況が不振であれば、プロスポーツチームは手放す対象になってしまうことを象徴した出来事でした。結果、球界再編問題に突入し、合併や新しい球団の誕生を通じて問題は落ち着きましたが、親会社、球団、ファン、選手さまざまな関係者が悲しみ、混乱を招いた出来事でした。
このような出来事をきっかけにプロスポーツチーム自らで稼いで黒字化させようとする機運が高まってきました。また、こちらのコンテンツでも紹介したように政府としてもスポーツビジネスを加速させる動きもあり2015年にはスポーツ振興などを推進する行政機関スポーツ庁が設立されました。当時、初代長官に就任した1988年ソウルオリンピック100m背泳ぎ金メダリストの鈴木大地さんの言葉からも機運の高さが伝わってきます。
スポーツで稼いでいくために
スポーツで稼ぐことを考える際に忘れてはならないのが、時代の流れとともに消費者行動も多様化し、時間の使い方が増えたということです。
時間の使い方が増えたためプロスポーツとの関わりも、家庭でのテレビ中継以外に創っていく必要が出てきました。
例えば、次のような取り組みです。
- テレビ以外でも気軽にスマートフォンなどで中継を観られるようにする
- スタジアムやアリーナなど現地での接点を増やすためにスポーツを観に行くのではなく、スポーツ観戦の枠を越えた体験やエンタテイメントを提供してスポーツに興味がない人でも楽しめるようにする
- 積極的にSNS発信をして試合がない日でも何気なくチームの情報に触れて愛着を持ってもらう
こういった取り組みが増えてきました。
時間の奪い合い時代
1日24時間という限られた時間をいかに自分たちのサービスに使ってもらえるか。
現代においてスポーツエンタメに限らず、ファンを創ってお金を稼いでいくためには必ず意識していきたいテーマです。
このサイトでは、スポーツエンタメの事例をきっかけに、そこから見えるビジネスの仕組みやファンを掴む秘訣を配信しております。ぜひ、一緒に楽しく学んで、どの業界でも活躍できるビジネスマンを目指していきましょう!